研究概要

研究概要

研究組織研究成果研究活動
各班の研究内容

■A01: 磁気的スピン変換班
代表者:大谷義近(東京大学物性研究所・教授・磁気物理)研究総括・物性測定
分担者:小野輝男(京都大学化学研究所・教授・磁気物理)試料作製・物性測定
分担者:木村崇(九州大学大学院理学研究院・教授・金属スピントロニクス)試料作製・物性測定
分担者:松倉文礼(東北大原子分子材料科学高等研究機構・教授・半導体スピントロニクス)試料作製・物性測定
分担者:Ronald Jansen(産業技術総合研究所・主任研究員・半導体スピントロニクス)試料作製・物性測定
研究協力者:Prof. Albert Fert (パリ南大学、CNRS Thales・教授・物性実験)
磁気的スピン変換物理の更なる深化を目指して、最近本研究班の研究者により発見されたスピンホール効果と非線形スピン揺らぎとの相関や界面における対称性と波動関数の接続状態を反映した相互作用現象を開拓する。また、表面あるいは界面におけるスピン軌道相互作用に起因するラシュバ効果やジャロシンスキー守谷相互作用とスピンダイナミクスの相関物性を探求し、その制御手法を開拓する。
本研究課題は、以下のようにブレークダウンされる。
⇒非線形スピンダイナミクスとスピンホール効果の相関物性の解明および界面構造の対称性の破れから生じる従来にない非線形スピン変換現象を開拓し、その学理を構築する。スピン軌道相互作用を媒介して誘起される新規な界面磁気異方性やスピントルク関連現象を開拓し、その制御法を確立する。


A02: 電気的スピン変換班
代表者:白石誠司(京都大学大学院工学研究科・教授・固体物理)研究総括・物性測定
分担者:浜屋宏平(大阪大学大学院基礎工学研究科・教授・半導体スピントロニクス)試料作製・物性測定
分担者:勝本信吾(東京大学物性研究所・教授・固体物理)試料作製・物性測定
分担者:齋藤秀和(産業技術総合研究所ナノスピントロニクス研究センター・主任研究員・半導体スピントロニクス) 試料作製・物性測定
連携研究者:辛埴(東京大学物性研究所・教授・光電子分光)物性測定
研究協力者:Ian Appelbaum (メリーランド大学・准教授・物性実験)
A02 班は、「電荷=スピン」間の変換を主な対象として電気的手法によるスピン変換の学理の構築と新奇物性現象の理解と探索を主な研究課題と設定する。対象材料は中心的には半導体とし、その表面及び磁性体などとの様々な界面で発現するスピン変換効果を広く探索する。
本研究課題は以下のようにブレークダウンされる。
⇒近年急速に発展・理解が進んできた正逆スピンホール効果をスピン流のプローブとして界面ラシュバ効果の役割を解明する。
⇒マグノン励起を用いた新たなスピン流生成・変換機能に着目して電気的スピン変換現象の背景学理を統一的に解明する。


■A03: 光学的スピン変換班
代表者:大岩顕(大阪大学産業科学研究所・教授・低温スピン物性)研究総括、物性測定
分担者:大野裕三(筑波大学大学院数理物質研究科・教授・半導体スピン物性)試料作製・物性測定
分担者:塚本新(日本大学理工学部電子工学科・准教授・応用磁性)試料作製・物性測定
分担者:水上成美(東北大学原子分子材料科学高等研究機構・准教授・スピンダイナミクス)試料作製・物性測定
分担者:安藤和也(慶應義塾大学理工学部・専任講師・スピン量子物性)試料作製・物性測定
研究協力者:Theo Rasing (ラドボード・ナイメーヘン大学・教授・光物性実験)
光・電磁波によって磁性体金属・絶縁体または半導体、あるいはそれらの界面で起こる光とスピンの角運動量変換を統一的に理解することで光によるスピン制御の新しい学理の創出を目指す。特に班員によって超短パルス光による逆ファラデー効果のような偏光依存非線形現象が発見されており、光誘起スピンダイナミクスから、高速角運動量変換やスピン軌道相互作用との相関を解明することで、従来の磁化反転を凌駕する超高速磁化反転の確立を目指す。さらに単一電子スピン・核スピン偏極の光制御の研究から、位相を含めたコヒーレントな光スピン変換を開拓する。
本研究課題は、以下のようにブレークダウンされる。
⇒非線形効果に基づく光角運動量変換:逆ファラデー効果に代表される偏光依存非線形光誘起スピンダイナミクスの素過程を解明し、従来の枠組を超える超高速磁化反転の物理の確立を目指す。
⇒単一光子・電子スピンコヒーレント変換:単一量子としての光子とスピン間の角運動量変換と共に、光と電子スピンの位相も含めたコヒーレント変換を実現する。


■A04: 機械・熱的変換班
代表者:齊藤英治(東北大学金属材料研究所、東北大学原子分子材料科学高等研究機構・教授・物性実験)研究総括・物性測定
分担者:小野正雄(日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター・研究副主幹・機械工学)機械設計・加工
分担者:高梨弘毅(東北大学金属材料研究所・所長・材料工学)試料作製・物性測定
研究協力者:Burkard Hillebrands (ドイツカイザースラウテルン大学・副学長・物性実験)
電子スピン・格子・磁化の間の相互作用を制御・利用することで、熱エネルギーや格子運動から効果的に電気エネルギーを取り出す現象に期待が集まっている。本研究班メンバーにより熱からスピン流・電力が生成される現象が見出され、大きなインパクトをもたらしたが、この発見の本質は熱のみならず一般的な力学運動・熱運動と磁化間の角運動量変換効果の端緒を開いた点にある。しかし従来、界面でのスピン変換効率は低く、観測された現象はごく限られていた。これを突破するために、本新学術領域研究で共有する界面スピン変換の研究を軸に、従来の枠を超えた機械工学・物性測定・材料工学、理論物理の先端研究者を結集させ、熱‐スピン変換を種にスピンに基づく機械運動・熱・スピン変換効果の学理体系を新たに構築する。理学・工学に跨る研究により、スピンを利用したエネルギーテクノロジーの基礎を創出する。
本研究課題は、以下のようにブレークダウンされる。
⇒機械運動・波動・音とのスピン変換:界面スピン変換を利用し、格子の回転を伴う連続体の運動とスピン輸送との相互作用現象を開拓し、学理を構築する。
⇒スピン・熱・電気相互変換:熱的スピンポンプの概念を一般化し、マグノン・伝導電子スピン流両者を駆使した、相反性を持つ熱-スピン相互変換物理を創出する。


■A05: スピン変換機能設計班
代表者:村上修一(東京工業大学大学院理工学研究科・教授・物性理論)研究総括、理論計算・シミュレーション
分担者:前川禎通(日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター・センター長・物性理論)理論計算・シミュレーション
分担者:Gerrit Bauer(東北大学金属材料研究所・教授・物性理論)理論計算・シミュレーション
分担者:永長直人(東京大学大学院工学系研究科・教授・物性理論)理論計算・シミュレーション
分担者:多々良源(理化学研究所創発物性科学研究センター・チームリーダー・物性理論)理論計算・シミュレーション
研究協力者:Yaroslav Tserkovnyak (カリフォルニア大学ロサンゼルス校・教授・物性理論)
磁性体・半導体・金属における種々の多様な準粒子間の相互変換を統一的に理解し、スピン変換現象の理論体系の構築を目指す。領域内の実験グループと連携して理論の立場から実験の提案を行うとともに、新奇なスピン変換現象の理論的予言を行う。
本研究課題は、以下のようにブレークダウンされる。
⇒ 位相や対称性の原理に基づく新しいスピン変換現象の理論的予言:幾何学的位相や系の対称性などの理論的枠組みに基づき、理論の立場から新規現象を探索する。
⇒新奇な物質群に関連したスピン変換現象の理論的探索:特別な電子構造、またはスカーミオンなど特別な磁化構造を持つ新奇物質群に特有のスピン変換現象の可能性を追究する。
⇒スピン変換理論の構築と機能設計:スピンゼーベック効果等スピン変換の統一的な理論体系を構築し、さらに新機能の付加・高効率化、特に異種界面でのスピン変換の理解を目指す。
⇒領域内実験グループとの連携:A01~A04 班の実験グループと緊密に協力して実験結果を理論的立場から解釈し、同時にスピン変換の新現象を実証する実験の提案を行う。