研究概要

研究概要

研究組織研究成果研究活動
領域推進の戦略

1) 基本的な戦略
 我が国の研究者が国際的に研究を先導してスピン変換研究拠点を形成できるように研究組織を構成した(研究組織相関図を参照)。研究班の構成はスピン変換の変換形態に基づいて行った。

組織図

すなわち、電流・電圧、光・電磁波、熱流といった外部入力が界面における交換相互作用やスピン軌道相互作用を介して磁気的、光学的あるいは熱・力学的に相互に変換される。これらのスピン変換プロセスに基づき、A01 磁気的スピン変換、A02 電気的スピン変換、A03 光学的スピン変換、A04 熱・力学的スピン変換の4 つの実験の計画研究班を設けた。さらにまた全ての変換プロセスが異種物質界面を経由して発現するマグノン,フォノン,フォトン等の準粒子間の変換現象であることから、A05班として理論の立場から、準粒子間の変換現象の学理を探索し、新たなスピン機能を提案・設計する研究班を設けた。この班は5 つの班の有機的な連携研究体制を保つための一種の糊としての役割を果たす。この班と各変換現象に関係する4 つの研究班との連携研究またそれぞれの班の研究協力者との国際共同研究を核として、新界面構造そして新スピン変換機能の提案、最終的にはスピン変換学理体系の構築を目指す。
 初年度の26 年から27 年末を目途にA01 からA04の4つの班は、A05 班や他の班と相互連携しながら試料作製と予備実験を行い、素子構造の設計に大凡の目途をつけ、27 年度末の内部評価に臨む(研究計画遂行計画表を参照)。中間評価の結果を反映させて修正する計画に基づき、28 年度以降それぞれのスピン変換物性の学理の構築と新機能の発現を目指す。引き続きこれらの研究班は総括班によって定期的に点検・評価を受け、適宜研究内容と方向の改善と修正を図る。

計画表

2) 具体的な研究内容
 A01 磁気的スピン変換班は、非線形スピンダイナミクスとスピン変換の相関物性およびスピン軌道(SO)相互作用を通じて出現する界面磁気異方性制御やスピントルクの開拓を二つの主研究課題として研究に取り組む。一つ目の課題に関しては、本研究班の研究者により発見された非線形スピン揺らぎを媒介として生じる異常スピンホール効果に着目し、新奇なスピン変換機構を開拓する。二つ目の課題については、異種物質の接合に誘起されるSO 相互作用とそれにより生じる新規なスピントルク現象の開拓を目指す。
 A02 電気的スピン変換班では、電荷⇔スピン間の変換を主な対象として電気的手法によるスピン変換の学理の構築と新奇物性現象の理解と探索を主な研究課題と設定する。対象物質は主に半導体とし、その表面及び磁性体などとの様々な接合界面で発現するスピン変換物性を広く探索する。
 A03 光学的スピン変換班では、磁性体と半導体とそれらの接合系を舞台として、光・電磁場とスピン系の角運動量変換の新しい物理の探索に取り組む。磁性体では、超高速磁化ダイナミクスから、偏光依存非線形現象とスピン軌道相互作用の影響を重点的に研究し、従来の磁化反転を凌駕するような超高速光磁化反転の可能性を開く。また半導体では、単一量子間角運動量変換の実現とともに、位相も変換するコヒーレント光スピン変換を開拓する。
 A04 機械・熱的スピン変換班では、本研究班メンバーにより見出された熱・スピン変換を一般的な力学・熱運動と磁化間の角運動量変換効果に着目して研究を進める。本研究を通じて機械運動・熱・スピン変換効果の学理体系を新たに構築し、理学・工学に跨る研究により、スピンを利用したエネルギーテクノロジーに資する基礎研究を遂行する。
 A05 スピン変換機能設計班では理論の立場から広く本領域を構成する各班と密接に連携し、磁気的,光学的,熱・力学的スピン変換物性の基礎物性研究を効率的に推進する支援を通して各班と総合的に協奏する。これによりスピン変換物理の普遍的な学理基盤を構築することを目指す。